「芳和荘」は、天然の要塞都市 萩市にある、遊郭だった建物を大切にしている旅館。 萩市は地形的に周囲と隔絶されているために少し時代の流れが異なり、一昔前の街並みがよく残されています。市内にはいくつかの地区がありますが、芳和荘はそのどれでもないような、ちょっと微妙な位置に建っています。
大正時代に建設されたこの建物は以前遊郭として使われていたもので、その規模は全国でも最も大きく、状態も良いものです。 口の字型に中庭を囲み、その二階には回廊があり、四角く切り取られた空が見え… 外部から邪魔されないこの特別な空間は、建設当時から全く変わっていないのかもしれません。
ご主人がコツコツと磨き続けてきた建物は、歪みはあれどまったく古さを感じさせず過去を彷彿とさせる輝きを持ち、これまた非常に美しい。
建築的価値は非常に高いのですが文化財などに認定されているわけではなく、景観重要建築物への指定のみ。維持管理から修理なんでもお一人でこなしてしまうご主人、文化財登録など関係ないのかもしれません。 このご主人は頭脳明晰で気さくな方で、誰からも好かれそうな人柄。とてもこの建物を愛でておられ、訊くといろいろ興味深い話をしてもらえます。何度でも訪れたいと思うのは建物の魅力だけではなく、きっとご主人の人柄でしょう。今後も元気に営業を続けてほしいものです。