日本を代表するクラシックホテル、富士屋ホテル。
明治中期の建物に現在でも宿泊できる宿はとても珍しい。
2020年完成したリニューアルを機に、徹底調査！

１号館の歴史

明治39年(1906) 竣工(85～97号室)
大正 9年(1920) 温水暖房設置
大正12年(1923) 震災、煙突が倒壊する被害
昭和初期(1930s) 85,88,91,93,95,97号室に浴室設置
昭和31年(1956) この年の時点で85,88,91,93,95,97号室に浴室ありとの記録
昭和31年(1956) 87,90号室に浴室設置
昭和32年(1956) 86,89,92,96号室に浴室設置

１号館の詳細

木造二階建
外壁：亜鉛引鉄板張
小屋組：和小屋
屋根：桟瓦葺

日露戦争に勝利した報を受けて明治 38 年に着工された。
はじめは新館という名前で本館の次の本格的な宿泊棟として完成した。
当初から 13 部屋あり、おそらく間仕切りがほぼ変化していない。
震災までは漆喰塗の外壁であった。
1 号館・2 号館ともほぼ浴室がついていたが、設置進度はずれていたようである。
1 号館はおそらくすべての部屋が猫足バスタブであったが、舟形のものと平らなものとあり、
おそらく平らなものは少し古いものであろう。
一階と二階で番号の回し方が異なり、非常に混乱する。

昭和 31 年の値段表では、
1700 円…87,90,94 号室
1900 円…86,89,92,96 号室
2300 円…97 号室(風呂付)
3000 円…85,88,91,93,95 号室(風呂付)
という設定である。

改装前後を写真で比較する

大改装前

大改装後

正面（2010/2）	正面（2020/9）

北側面（2015/6）

部屋・間取り

1階

竣工時(1920)の間取り（推定）

裏側の廊下から正面側に入ると階段室があり、そこに 86,87,89,90 号室の入口がある。
階段の目の前は風呂の入っている左右からの張り出しによって狭まり、玄関が見えづらくなっているが、
竣工時は風呂がなく、幅の広いホールが存在した。
普段施錠されている玄関側に行くと、85,88 号室の入り口がある。
はじめは浴室がない分部屋に洗面が設置されていたようだが、
間取りのあまり変わっていない西洋館では、これがよく残っている。
87 号室部分は、カメリアとして利用されていたため、宿泊することはできなかった。

大改装前(2018)の間取り

今回の改装では、後ろ側 2 室が合わさり広い部屋となった。
もともと階段横の狭いスペースに入り口扉があり見た目がよくなかったため、今回の統合で入り口が移動した。
そのほかに変化は少なく、うまく仕上げられている。

大改装後(2020)の間取り

改装前後を写真で比較する

大改装前

大改装後

階段（2010/2）	階段（2020/9）

2階

竣工時(1920)の間取り（推定）

1 階と異なり階段正面部分が部屋として利用されている。
竣工当時から 7 部屋あり、間取りにほぼ変化がなかった。
真ん中の 94 号室については 93 号室のコネクティングルームとして使われており、
廊下から直接入ることはできなかった。

大改装前(2018)の間取り

改装前後を写真で比較する

大改装前

大改装後

廊下（2018/3）	廊下（2020/9）

階段室（2015/6）	階段室（2020/9）

階段室（2010/2）	階段室（2020/9）

旧番号	旧分類	旧バスタブ	扉上窓	新番号	新分類	建設年
85	SP	平ネ	〇	15	DH	1906
86	ST	？	〇	16	HS	1906
87	D	？	×	(16)		1906
88	SP	平ネ	〇	17	DH	1906
89	ST	？	〇	18	HS	1906
90	ST	ネコ	×	(18)		1906
▶91	SP	？	〇	▶19	DT	1906
92	ST	ネコ	〇	20	HO	1906
▶93	JN	ネコ	〇	▶21	TW	1906
▶94	C93	×	〇	(21,2)		1906
▶95	SP	ネコ	〇	▶22	TW	1906
96	ST	？	〇	23	HO	1906
97	ST	平ネ	〇	24	TW	1906

JN…Junior Suite	HS…Historic Suite
SP…Superior Twin	DH…Historic Deluxe Hollywood Twin
DX…Deluxe Twin	HO…Historic Hollywood Twin
ST…Standard Double	DT…Historic Deluxe Twin
C…Connecting Room	TW…Historic Twin
D…Camellia Room